西村京太郎が考える秋葉原 トラベルミステリの一人者西村京太郎の十津川警部シリーズ最新作『アキバ戦争(AA)』が発売されました。十津川警部シリーズとしては3年ぶりの新作とのこと。

 日本画家の大家が強引に連れて行かれたメイドカフェで18歳で交通事故死した娘あすかに似たメイド喫茶のWRの明日香(18歳)に出会った。娘の代わりにと高級ホテルに泊まらせ、ブランド服を買い与え・・・かりそめの父娘の生活を楽しんだ・・・直後明日香が誘拐された。そこ立ち上がったのがメイドの明日香のファン、城萌え三銃士と呼ばれる3人だった・・・

 西村京太郎というと鉄道ダイヤをはじめとしたトリックでそのリアリティさが、読者の心をつかんでいたが、『日本ダービー殺人事件』のような、専門外の分野に手を出して、間違いが多いと指摘されることがある。今回も『アキバ戦争』のテクストからメイド喫茶関連の記述を検証してみる。

17-18P
「秋葉原は風俗の先端、アキバで一番盛んな風俗はメイド喫茶」

 民俗学的な風俗であれば、そういう表現もありかと思うが、その期待はのちに見事に裏切られる。

19P
「最上階の七階」

 劇中に登場するメイドカフェは雑居ビルの7階。これに該当するのは、@ほぉ〜むかふぇ本店とぴなふぉあ2号店。しかし「おまじない」やメイドにランキングが導入されているため、モデルは@ほぉ〜むかふぇ本店。なおあすかはお店のNO.3という位置づけ。

105P
「昔ながらの古い電気街、そしてもう一つは、新しいビルがそびえている新しい技術の街、その中間に風俗の街がある。」

 図にしてみました。民俗学的な風俗であれば風俗街にはならない。このことから、風俗がいかがわしさをにおわすものということがわかる。もちろん大きな間違い。メイド喫茶はいわゆる風俗ではないし、再開発地区と電気街の間にメイド喫茶が集まっているわけではない。そして新しいビルであれば新しい技術という大きな勘違い。新しいビルはあくまでオフィスビル。秋葉原で風俗というと再開発側、昭和通りがメインとなる。

115P
「オタクらしく振舞い、缶詰のラーメン缶を手に持ったり」

 ラーメン缶を持つのは観光客。もちろんホコ天でエアガンを乱射したり、ストリップショーを敢行するのもオタクの振る舞いではない。

191P
「メイド喫茶や和服喫茶、あるいは、ツンデレ喫茶といった店がが一日一軒の割合で、増えている。」

 秋葉原には和服喫茶やツンデレ喫茶は存在せず、もちろん1日1軒も増えない。フィクションといえばそれまでだが、その後にフィギュアの衣装への言及があり、和服は人気がないとある。人気のない和服を衣装として取り入れる喫茶がとの整合性が取れない。

 このほか、秋葉原に近い赤羽など、基本的な間違いの記述も目立つ。秋葉原-赤羽間は約20分で、これは秋葉原-新宿よりも遠く、赤羽からは池袋、上野が誓い。秋葉原に近いという地名であれば浅草橋、湯島、本郷3丁目など徒歩圏が一般的でこの街より近い繁華街がないことが前提となる。西村京太郎はどうしてしまったのだろう?

 交通事故で亡くなった娘、メイドカフェで働く女の子も永遠の18歳から変わらない、という設定がポイントだったのかなあ、と思う。それならそれで違う展開もあったのでは。

<参考ブログ>
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